大腸内視鏡検査について

大腸内視鏡検査について

大腸内視鏡検査とは

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、お尻から内視鏡を挿入して、大腸内の様子を観察する検査です。
必要に応じて細胞を採取し、病理組織検査にかけることで精密な診断を行うことができます。
また検査時にポリープが発見された場合、大きさなどによっては、その場で切除することも可能です。
この検査は大腸がんをはじめとする、さまざまな病気の発見に有用とされています。

どんな病気が見つかるの?

  • 良性、悪性の大腸腫瘍
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、ベーチェット病など)
  • そのほかの大腸の炎症(感染性腸炎など)
  • 形態異常(大腸憩室、大腸憩室炎、大腸憩室出血など)

検査で見つかりやすい所見は、上記を一例とする、内視鏡による観察で正常とは異なる画像が見られる場合です。

どんな人が受けたほうがいいの?

  • 症状の有無にかかわらず便潜血検査で陽性と指摘された方
  • 血便(血が混ざった便)のある方
  • 大腸がんのリスク因子(大腸がん家族歴、喫煙、アルコール多飲、肥満、赤身肉・加工肉摂取が多い、運動不足など)を有する40歳以上で、過去に大腸内視鏡検査を受けたことがない方
  • 過去にポリープの切除歴がある方

上記に心当たりのある方には、大腸内視鏡検査の受検をお勧めします。大腸ポリープ切除歴がある方も、フォローアップ目的で定期的に検査を受けておきましょう。

大腸がん検診と全大腸内視鏡検査について

がん検診とは

「がん検診」は、がんの有無を調べることに特化した検査であり、体の状態を全般的に調べる「健康診断(健診)」とは異なります。
中でも、自治体を中心に推進されるがん検診は「対策型検診」と呼ばれ、「集団におけるがん死亡率の減少」をめざすものです。
これは、「がんの疑いのある人を見つけ出し、精密検査へとつなげることで、がんで死亡する人を減らすのが目的」ということです。
ほかにも、検診には「任意型検診」と呼ばれる、自分の死亡リスクを下げるために個人が受けるものもあります。
当院をはじめ、各医療機関は有用性について検証が重ねられた、がん検診のガイドラインを遵守した手法でがん検診の実施にあたっています。

しかし、2019年度の調査によれば、政府の「第3期がん対策推進基本計画」が目標としていたがん検診受検率50%に対し、大腸がんを含む多くのがん種別検診率は40%台と目標達成に至りませんでした。近年、大腸がんの罹患者・死亡者数ともに増加傾向にあると報告されていることからも、大腸がん検診を受ける重要性は高まっているといえます。

大腸がん検診の方法

大腸がんの「対策型検診」としては「便潜血検査」が主に推奨されており、便潜血陽性の判定が出た場合の任意の精密検査として「全大腸内視鏡検査」へ進んでいただくのが一般的です。そのため、ここでは便潜血検査と全大腸内視鏡検査についてご説明します。

便潜血検査

便潜血検査とは、2回便を採取し、その中に血液の成分が混じっていないかを調べる検査です。
便の採取を2日に分ける場合と、1日で済ませる場合とがあります。
また、この検査は検体を処理する手法の違いで、大きく「化学法」と「免疫法」の2種類に分かれます。
化学法は使用する薬剤との兼ね合いで、検査実施にあたって食事や服薬の制限がありますが、後に開発された免疫法にはそういった制限はありません。
ですが、がんの感度(がんがある場合に陽性となる確率)に関して、対象とした病変の進行度や算出方法によってかなりの差がありますが、免疫法は科学法に劣らない、ないしはより有用であるとの報告もあります。
そのため日本では現在、免疫法が主流となっており、当院においても便潜血検査には同法を用いています。

便潜血検査の最大のメリットは、採取した便を調べるだけであることから、検査に伴う副作用や事故のリスクがない点にあります。加えて先ほどもお伝えしたように、免疫法であれば食事などの制限をお願いすることもありません。こうしたことから便潜血検査は患者さんへの負担が少ない手法といわれており、対策型検診だけでなく、任意型検診としても推奨されています。

全大腸内視鏡検査

便潜血検査で、「陽性」の判定が出た方は、精密検査として「全大腸内視鏡検査」へと進んでいただくのが基本となります。
全大腸内視鏡検査は、盲腸まで大腸全体を内視鏡で観察する検査です。
大腸の内視鏡検査というときには、多くの場合、全大腸内視鏡検査のことを指します。
この検査は便潜血検査や、直腸からS状結腸までの大腸の一部を内視鏡で観察する「S状結腸検査」と比較しても、よりがん発見に有用であり、死亡率減少に寄与すると報告されています。

ただ検査前の準備として、患者さんには大腸の内容物を出すための下剤の飲用と、大腸の動きや分泌液の発生を抑制するための鎮痙剤(ちんけいざい)の服用をお願いすることになります。
そのため、薬剤により副作用が生じる可能性があり、ほかにも、内視鏡の挿入に伴う出血、大腸に穴が開いてしまう「穿孔(せんこう)」が生じることも考えられます。
まれではありますがこうしたリスクがあるため、集団に推奨される対策型検診ではなく、個人が選択する任意型検診に位置づけられています。

当院の取り組みについて

当院では、①「安心・安全に」、②「苦痛を少なく」、③「正確な検査」を行うよう努めています。

  • ①「安心・安全」:当院では日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医の資格を有する経験豊富な医師3人が、月~金曜に検査にあたる体制を敷いています。安全が確保されない場合には、検査を中断することも検討します。
  • ②「苦痛を少なく」:適量の鎮痛薬・鎮静薬を用いることで、速やかに最深部である盲腸まで内視鏡を挿入します。
  • ③「正確に」:観察はもちろんポリープ切除などの処置に際しても、精密に行っています。検査中に大腸ポリープを見つけた場合、事前に患者さんの同意を得ていれば、その場で切除することが可能です。

当院の全大腸内視鏡検査の流れについて

  • ①外来を受診し検査予約

    外来受診時に検査予約をお取りください。その際に、「検査の内容および注意事項」をご説明し、前日夜に服用する下剤をお渡しします。検査当日の下剤服用をご自宅でされる場合は、当日用の下剤も併せてお持ち帰りいただきます。

  • ②検査前日

    夕食は早めに済ませていただき、就寝前に下剤の服用をお願いします。

  • ③検査当日

    朝から禁食となります。ただし、飲水(スポーツ飲料やお茶も可)はしていただくようお願いします。内服および自己注射に関しては、検査予約時の指示に従ってください。

  • ④前処置(下剤服用)開始

    検査当日の下剤服用をご自宅でされる場合は、看護師から状況確認の電話をさせていただきます。もし何かお困りのことがあれば、病院にお電話ください。

  • ⑤来院後

    病院で当日用の下剤を飲まれる場合は、看護師の指示に従って服用してください。便が透明になった段階で、検査開始の判断をします。その後、検査室に入り、検査着に着替えていただきます。点滴が準備されますので、鎮痛薬・鎮静薬の投与を受け、検査開始となります。所要時間は15〜30分程度が基本ですが、ポリープ切除などの処置があればこの限りではありません。

  • ⑥検査後

    リカバリールームで休憩をお取りいただき、問題がなければ帰宅となります。なお、ポリープを切除した場合には出血するリスクもありますので、「検査後の説明」を遵守してください。後日、外来にて病理検査の結果説明を行います。

メッセージ

「便潜血検査って意味があるの?」「これで大腸がんがわかるの?」と思われている方が多数いらっしゃることかと思います。
陽性だからといって必ず大腸がんであるわけではないですが、大腸がんの疑いがある人を見つけ出すスクリーニング検査の役割を果たしており、その結果、大腸がんで亡くなる人を減らすことにつながるという点で非常に有用です。
大腸がんではなかったとしても、ポリープや炎症が見つかることもあります。

ですから便潜血検査が陽性のときは、大腸に何か問題がある可能性を考慮し、全大腸内視鏡検査を受けましょう。
また、陰性だからと言って、「大腸に問題がない」とは決して言えません。
陰性であっても、がんが心配な方、大腸がんの家族歴を有する方、糖尿病など大腸がんの罹患リスクが高いとされる疾患のある方は、一度、全大腸内視鏡検査の受検をご検討ください。

よくあるご質問

  • Q:大腸内視鏡検査の予約はできますか?

    A:一度外来を受診していただき、予約をお取りいただきます。ご自宅での下剤服用を希望される方には、その際に下剤をお渡しします。なお当院では、便潜血陽性の方は内科外来で対応させていただきます。
  • Q:検査は保険適用になりますか?

    A:基本的には保険適用になります。観察のみ行った場合と、ポリープ切除など追加処置をした場合では価格が変わります。
  • Q:検査後の生活に制限はありますか?

    A:検査当日はご自身で自転車、バイク、自動車を運転せずに、徒歩、公共交通機関にてご来院をお願いします。
  • Q:何となく怖くて心配です……。

    A:初めての検査であれば当然です。当院では、患者さんのご不安を取り除くために予約時のわかりやすい説明を心がけており、実施時には鎮痛薬・鎮静薬を投与することで、リラックスして検査に臨んでいただけるようにしています。どうぞご安心ください。